農家経営分析・診断・コンサル担当者研修会 前期(長崎)
平成30年7月11日(水)~13日(金)まで、JA長崎県中央会主催の標記の研修会が開催され、講師を務めさせて頂きました。会場は長崎県JA会館。出席者は県内JA26名、県振興局・関連団体11名、県外JA5名のとなりました。
【研修内容】
1.法人決算書の読み方
2.管理会計の手法
3.農業経営支援の実務
4.経営分析演習
5.農業経営管理支援の全体像
6.事業と生活の計画
7.フィードバックと経営目標
【アンケート集計】
1.法人決算書の読み方
(大変良かった26%、良かった42%、普通24%、いまいち8%、悪い0%)
2.管理会計の手法
(大変良かった16%、良かった58%、普通26%、いまいち0%、悪い0%)
3.農業経営支援の実務
(大変良かった30%、良かった59%、普通11%、いまいち0%、悪い0%)
4.経営分析演習
(大変良かった47%、良かった37%、普通16%、いまいち0%、悪い0%)
5.農業経営管理支援の全体像
(大変良かった36%、良かった53%、普通11%、いまいち0%、悪い0%)
6.事業と生活の計画
(大変良かった50%、良かった50%、普通0%、いまいち0%、悪い0%)
7.フィードバックと経営目標
(大変良かった56%、良かった38%、普通3%、いまいち3%、悪い0%)
8.総 合
(大変良かった54%、良かった42%、普通4%、いまいち0%、悪い0%)
【研修内容について】
・技術指導関係の業務なので、経営について考えることが全くなかったが、技術指導と絡めて経営についても話せるようになると、農家のためになるのではないかと感じた。
・経営分析演習、ロールプレイを行ってみて、考えをまとめて発表を行うのは難しかったが、自分の考えをしっかり言うのは大事だと思う。
・スペード感がありついていくのがやっとで大変だったが、演習をベースとした研修で自ら考えるという内容面からして、より効果的であったと感じた。
・法人の準備金のことなど、わかりやすい説明で理解できた。ロールプレイングを重ねていきながら、農家へのアプローチの手法を身につけたい。
・法人の決算書の読み方では、自分のJAの総代会資料で振り返りをしてみたいと思う。何回か研修を受講させていただいたが、なかなか、実践に活かせていないことがあるので、今後はもっと活かせるよう頑張りたい。
・演習はあるが、時間が十分になく考える時間が足りなかった。内容が多く、資料の文章を聞くことが多い。具体的なデータを使った演習やロールプレイは勉強になった。
・前知識がないと分からない部分があった。(申告書の読み方)
・演習が架空のものでなく生のデータが材料になっていたので、実践的なトレーニングができて良かった。経営分析というとどうしても「指導しなければ」という意識だったが、一緒に考える(主体は農家)という風に意識改革ができた。
・農家の人をいかにその気にさせるかについて、分かりやすく説明してもらって良かった。
・青色申告の決算書など、具体的なデータが多く、実務につながりやすい良い研修になった。
・個別経営支援の実務経験がほとんどなかったので、新鮮な内容ばかりだった。今年度から労力支援、労災保険にたずさわるので貴重な研修を受講できた。また、自身の課題(脱線すると軌道修正ができず、予定の説明が終わらなく、グループ内のまとめより持論に引っ張られがち)も知ることができた。
・申告書類や分析書類等、実践で読み取ることも説明することも回数を重ねていくしかないと感じた。
・決算書の見方等わかりやすくて良かった。決算書は家計の内訳までは見えないので、農家とのコミュニケーションを通じて農家から引き出し、それを踏まえた農家自身の目標設定が大事だと思った。
・ロールプレイングによる経営目標等の演習は良い経験になった。また、経営分析演習においても初めて青色申告決算書を見て、各データを参考に分析を行い、所得率を決めたりするのも非常に良い経験だった。
・参加者(班構成)が別業務をされている方でうまく分散していたので、グループトークでは違った切り口での意見が出て参考になった。分析結果のフィードバックでは思ったように話せなかったので、練習が今後も必要と思った。
・最近、市町が認定農業者に対し、法人化を強く進めており、相続を考えている人、後継者のいない人、不動産業などの規模が大きくなってきた人などが、前向きに考え始めている。今まで、法人の記帳代行は断ってきたが、今後それも引き受けざるを得なくなってきた。今回特に法人決算書の読み方、管理会計の手法に期待をもって参加したが、知識不足でもったいなかったと感じた。知らないのであれば、ある程度の予習をして参加すべきと感じた。他に、何回受けても、現実とのギャップや自分のいたらなさを感じるとともに成長させていただいていると感じ、来週からリアル現実に戻る。
・農協の視点からの経営支援方法だというのを実感できた。これまで、法人化とか会計の仕組み等の研修が主で、このような生の組合員を想定したシュミレーションは実践的で実行しやすいと思った。また、家計を基準とした農業の売上目標設定についても根拠がはっきりしていて、組合員にも納得いただけると感じた。
・法人の決算書の読み方は難しかった。
・ほとんどのことが初めてであったが、今後の業務には必ず必要となるスキルばっかりだと思うので、内容について知らなかったりすることも知識を深めることができて良かった。
・自分で考えることがこんなにも難しいことなのかと改めて実感した。後ろの方に座っていたが、パワーポイントの字が見ずらかった。
・今回の研修会で、良い点は講師の知識が豊富で現場で使える手法の良し悪しを明確に教えてくれた点。悪いと感じたのは、講師の方の進み方や話し方が早かった点。また、会場に対してスライドの画面が小さかった。
・農家さんと農業の話をするのは好きだが、経営のことまで踏み入れるのは難しい。何事も経験値をあげなければと感じた。今回のシュミレーションで決算書を見て、やはり一千万円稼ぐのは大変なことだと感じた。普段の業務でできない経験と他の農協や行政などと意見交換ができたことはとても良かった。
・法人決算書の読み方については、講習のスピードが早くてついていくのが大変だった。今後は農業法人も増えると思うので、復習をして理解を深めて活用できるようにしたい。研修に使用するデータが多く準備されていたので、参考になったし、このようなデータが必要であることが分かった。ロールプレイングがとても良かった。
・練習という形で実際の経営を分析し、生産者に説明するところまでやったが、非常に勉強になった。今までも生産者と面談する機会はあったが、生産者のやる気を引き出すという視点が抜けていたことに気づかされた。
・申告書の見方などは初めてだったので、とても勉強になった。
・自分の課題としていた損益計算書や貸借対照表の解説が分かりやすかった。また、農業経営分析というのも実際にしたことがなかったのでとても勉強になった。また、何年か後に改めて聞かせていただいた講習内容でとりあえず理解した部分で自分や他人に経営分析できるよう役立てていきたい。
・初めて見たり、聞いたりすることが多く、初日は聞くだけで一生懸命だった。ロールプレイは現実にそぐわない点もあったが、話す内容のイメージはできた点は良かった。
・実務に活用しやすい研修であったが、法人決算書の見方は難しいのではと思う。
・演習を解くことは大変ためになったが、時間が足りなかった。仮説と仮説の提供。説明の仕方をもっと勉強したいと思った。対面演習ではぎこちなかったが、少しでも練習しデータを把握してないと話が続かず大変であった。
・グループ内での話し合いみたいなものがもっとあると思っていたが、1日、2日目はあまりなかったように感じた。3日目のグループワークはとても楽しくできたと思う。時間がない中ではあったと思うが、充実した研修であったと思う。
・青色申告書を読むことが初めてだったので理解するのに苦労したが、今後、必要になってくると思うので、しっかりと覚えていこうと思った。決算書を読む時間を増やしてほしかった。
・経営の良し悪しが分かれば指導の進め方にも幅ができるが、一筋縄ではいかないと思う。誰でもかれでも申告書を見ているものではないと思うので、話を進めにくいと思う。農家が自身の経営・家計を見られて良い気にはならないと思う。仮に自分が支援を進めた際、農家に失礼があった場合、若手の自分では責任を取れないので誰が後始末をするのか。ただし、自分が農家になったことを考えると大変意義あるものだった。
・演習も多く、実践的に学ぶことができたことが良かった。講師の話も聞きやすく集中できた。
・今回の研修を受けることができて良かったと思う。決算書の見方について事前に勉強しておいたらよかったのではないかと思う。
・財務諸表から直接農家の財務を100%把握できないことを学び理解を深められた。
・営農指導員の資格をとる必須研修ということで、とても実践的な研修会で今後役に立つことが多いと感じた。受講者の中にはあまりコンサルをやってこなかった人もいるので、その人たちに分かりやすい内容をいれる。もしくはレベルを少し落とした研修があればいいかと思った。
【JAの経営支援事業の課題】
・技術指導と経営指導と分かれているので、なかなか農家の所得まで理解できていない部分がある。
・全て農家組合員に関係ある事業であるととらえ、JA全職員が知識として身につけておく必要があると思う。当JAも専門部署の一部の職員のみが対応しているのが現状である。全部署を対象にした研修会を開いた方が良い。
・地域のJA全てに記帳代行のシステムが入っていない。
・私たちの記帳代行も最終目的は経営支援をめざしているが、なかなか、指導員の不足や知識不足、また、JA内部での横のつながりができていないので、今後の課題と考えている。
・現状、担当者がメインで進めているが、他専門も経営支援、指導は必要不可欠なスキルだと思うが、そこの意識が共有できていない場合があると思う。青色申告など財務諸表の見方も経営担当者以外に必要なスキルであり、技術以外で学ぶ場が必要である。
・支店により横つながりの違いが大きい。貸付の際、意見を聞かれたり、しなかったりする。
・記帳代行サービスがあっても、個人情報の観点等から情報の共有はできているとはいえず、他者との比較等、分析までできているのかわからない。
・具体的な課題や目標や対策を農家から引き出すことは、特に有効な手段だと思う。
・研修の教材となったデータが全て、記帳代行で得られるとは限らないし、すべてのJAが代行しているわけではないので、まず、データを揃えることが難しい。また、教材の段階までまとめる能力もかなり高いものが求められると思う。実際の営農指導や普及の中で、診断やコンサルの段取りや手法を相談し、練ることができるのか厳しいと思われる。
・営農指導員と経営診断士、青色申告会などJA内部でも横のつながりを持って、農家の経営支援ができればいいと思う。
・若手職員及びベテラン職員の退職が増え、人員が不足している。人員不足の中でいかに経営管理を指導するかが課題だと思う。
・JA独特の記帳代行システムを使用しているところもあるようだが、県内で様式の統一が必要と思う。また、JA、振興局などの連携も積極的に行えると良いと思った。
・自身の部署だけではないが、組合長が変わると180°転換する方針。それも農家にとって良いのか?というより役員にとっての体制だったり、方針だったりとしか見られない。悪しきものは転換しても撤廃しても大変良いと思うが、何もかも改めていくことに誰も歯止めをかけられない。中堅が去り、どの部署も人材不足で、何にも手が回っていない。どうしたら健全な組織になるのだろうか。
・JAそお鹿児島はTAFなので、営農・畜産指導員との連携や情報共有が足りない点に気づかされた。また、今までは申告書を作成して配布して前年との比較のみの説明しかできていなかったが、今回の研修はそこから先の手順だったので、大変参考になった。そのような点がステップアップする上で必要と思う。
・人材不足。農家の高齢化、やる気をおこさせる指導員が少ない。
・単収や単価など分かりやすい指標にばかり目がいき、なかなか各農家が抱える問題に目を向けていない場合が多いと感じた。しっかりと背後に隠れている課題についても、把握できるように農家とのコミュニケーションを取りながら、また、やり方も考えながらしていかないといけないと感じた。
・所属している関係機関では、栽培担当と経営担当が分かれており、連携が課題となっている。本来ならば、生産者と接する機会が多い、栽培担当が経営の知識を持って指導できることが理想的であり、効率的である。人員削減による業務多忙で連携もうまく行っていない。
・青色申告会は申告までで、その後の経営指導まで至ってないのでもったいないと思う。
・当JAでは経営管理指導はおそらく行われてなく、技術指導員ではあるが、経営分析診断を行うという余力は職務的に厳しいような気がする。
・信頼関係と指導側の知識、スキルアップ向上が課題。今回学んだことを利用する機会を自ら作り出すこと。
・経営診断者のみで行っているので、金融課とかも連携しなければ目標がきちんとしないと思う。
・当農協でも専門的コンサル担当があればいいと思う。
・JAと組合員の理解の差だと思う。データだけではなく今後どのようにして経営を行っていくのか道しるべを作る必要があると思う。普段からのコミュニケーションが大切。
・経営が危機的状況になってから支援チームを作り、対処しているが対応が遅く、半数は自己破産になるケースが多い。毎年のルーチン化した経営分析を行うには、記帳代行しているJAと連携し、より協力して取り組む必要性があるので、担当レベルでなく、組織間で経営分析、指導体制を取ってほしい。
・前提として、債権保全や回収見込を考えなければいけないので、「提案」という形をとることは難しいように感じた。
今年で6回目の研修会でしたが、新たな内容も加えさせてやらせて頂きました。毎年講師としてお呼びいただくことが自己研鑽にもなっています。
今回も事務局を務めて頂きました、宮崎次長、松浦様、福田様、ほか皆様、大変お世話になりました。後期もよろしくお願いします。