農協法改正/中央会改革ー誤解に基づくJA改革論。日経新聞を読んで

日経新聞の社是の一つでもあるかのようなJA叩きだが、昨今の規制改革会議の動きにのって、4月9日の朝刊で「農業協同組合法の抜本改正に乗り出す」として農協改革の必要性を力説した。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS08037_Y4A400C1MM8000/

法の改正は決定したわけではないようだが、一連の流れの中で中央会や連合会の在り方も検討課題となっているのは確かなようである。

JAの改革は必要なことであるので、進めるところはどんどん進めるべきだが、日経の主張は実態を踏まえず「JA叩き」をやっているフシがあるので与し難いものがある。

上記の記事の中のにもJAへの誤解が多くあるので、簡単なコメントをつけ挙げてみたい。

●「農協に出資した農家への配当制限も緩め、利用分に応じて受け取れるようにする。」
利用分量に応じた配当はJAはとっくに行っている。また、出資の配当制限(8%以下)や出資の制限だが、出資による配当を大きくすることは非農業者へ分配を大きくすることにもなり、日経が言うような農業振興には全く貢献しない。ほとんどの農家はJAの年数万円の出資配当を目当てに経営などしておらず、それだけの資本の蓄積もない。どさくさまぎれに日経は「資本家」の利益誘導のための主張をしているだけである。

●「株式会社になれば、農家の仕入れ価格や手数料負担が下がる可能性がある。」
全くよく解らない主張。この根本にあるのは『JAは独禁法の適用除外だから不当に高いものを売りつけている』という誤解だが、出荷や資材については十分自由競争が行われ、株式会社をはじめとしたJA以外の業者は十分農家に食い込んでいる。つまり不当に高ければ、今でも農家はJAを使わない。お陰で、茨城県のJAの経済事業のシェアは3割だ(笑)。

 

また、元県中央会職員としては以下の記事にも注目したい。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS11029_R10C14A4EE8000/

●「JA全中は約700ある地域農協を経営指導する権限を持つが、画一的な指導で、各農協が地域の実情に応じたサービスを展開しにくくしているとの指摘がある。JA全中による各農協への監査も「身内同士のなれ合い」との見方がある。」

中央会の「指導」の内容を大きく誤解しているのだが、中央会の指導の多くは、国の法律や制度の普及やコンプライアンスに絡むもので、ほとんどが「行政の下請け」的な内容である。従って画一的なのはある意味当然で、「民営化」したところで採算が取れるものでもない。中央会は、日経の言うようなJAの「組合員サービス」などについての指導はほとんど行っておらず、やっていたとしてもその点は強制ではない。人事制度や支店統廃合、直売所経営などではJAも外部コンサルなどを入れており、充分競争にさらされている。

監査が「身内同士のなれ合い」になる可能性は無きにしも非ずだが、自由競争下でクライアント企業から直接報酬を受けている監査法人にもその危険はあり、実際、癒着もあった。その意味からすると「賦課金」という市場以外から調達する資金で運営されている中央会監査のほうが、独立性が担保されている可能性が高いという見方もある。

冒頭にも行ったがJAに改革は必要だが、やみくもに叩くだけでは農業は決して改革されない。