担い手支援担当者等研修会 経営管理実務コース(福岡)

2021年9月28~29日にかけて、標記の研修会の講師を務めました。主催は福岡県中央会で、参加者はJA5名、信連1名、県普及センター6名の合計12名でした。

場所は毎年のJA福岡教育センター。換気装置(?)や受講生同士を仕切るアクリル板の整備など、研修環境としてはできる限りの対策を取っている印象を持ちました。

【内容】
1.支援マインド
2.農業経営分析の実務
3.経営分析演習
4.農業経営管理支援事業の事業戦略
5.事業と生活の計画
6.経営分析のフィードバック

【アンケート結果】
1.支援マインド
(大変良かった50.0%、良かった33.3%、普通16.7%、いまいち0%、悪かった0%)
2.農業経営分析の実務
(大変良かった41.7%、良かった50.0%、普通8.3%、いまいち0%、悪かった0%)
3.経営分析演習
(大変良かった33.3%、良かった50.0%、普通16.7%、いまいち0%、悪かった0%)
4.農業経営管理支援事業の事業戦略
(大変良かった53.8%、良かった23.1%、普通23.1%、いまいち0%、悪かった0%)
5.事業と生活の計画
(大変良かった53.8%、良かった30.8%、普通15.4%、いまいち0%、悪かった0%)
6.経営分析のフィードバック
(大変良かった46.2%、良かった46.2%、普通7.7%、いまいち0%、悪かった0%)
7.総合評価
(大変良かった58.3%、良かった33.3%、普通8.3%、いまいち0%、悪かった0%)

【研修会の良かったところ悪かったところ】
・心構えにかかる説明が分かりやすかった。 「説明する」「提案する」スキルよりも「考えて引き出す」スキル向上に努めたいと感じました。
⇒はい、引き出すスキル高めてください。
・経営分析というと今までは提案しがちだったが、「支援マインド」をもって農家の考えを引きだせるようになる。 農家との信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルを持つ。
・良かった点:周りの方の意見が聞かて様々な視点で研修会を受けることができた。
⇒講師やテキストからだけでなく、参加者から学んでいただくのも研修の狙いです。
・悪かった点:元々の単語を知らない人からしたら、講義についていくのに必死だった。
⇒なんの単語ですかね。研修中、聞いてもらえればいいんですよ。
・金融目線での経営分析しかやったことがなかったため、自分の知らない切り口で分析の考え方うぃ示してくれてよかった。また他の受講生と意見交換をしながら考えていくことで退屈にならず、成程なと感じることもあり良かった。
⇒退屈にさせないというのも、講師の課題なのです。

・今まで受けた経営分析の研修の中で一番わかりやすかったです。法人に対する分析の手法についても知る機会があれば設けてほしいです。
⇒公開セミナーに法人基礎があるので参加していただいても結構です。
・様々なデータを元に事前準備が大事だと感じた。農家との信用・信頼が必要と思う。それがないと内容がよくならない。 仮説を立てることの大事さが分かった。あくまでも仮説。
⇒はい、あくまでも仮説。そしてどこまで行っても仮説なのです。
・2日目からの参加で申し訳ございません。2日目からの参加でも非常にわかりやすい説明で勉強になりました。これまでの経営支援は、”最終目標”や”具体的な目的”等を明確にしないままあいまいな状態であったかなと少し感じました。今回の研修会でそれらの重要性(動機付け)をあらためて認識することができました。ありがとうございました。
⇒1日目からお会いしたったです。また機会があればどうぞ。
・具体的な事例での説明が多くわかりやすかった。実践的な演習も多く、すごく役立つと思います。
⇒ありがとうございます。
・いちごの経営分析をグループでできたとても勉強になりました。
・農家の経営分析を行う上で大切なことは、専門知識を持っていることではなくて、ポイントを押さえて農家の目線で分析を行うことが理解できてよいかった。
・経営分析について、数字を伝えるわけではなく、農家さんに気づかぜることが大切ということをわかりやすく説明してもらえたところが良かったです。
・「3.経営分析演習」は、自分では気づけなかった事に気づけたり、非常に有意義だった。 「3.経営分析演習」で、他の農家のデータと比較する場合があった。個人情報になるので比較データを農家に返すときは部会平均との比較とかになってしまうのかなと思いながら演習をしてういました。個人間比較を実際にやるときのハードルが高そうです(地域差があるのかもしれませんが) 「6.フィードバック」学生時代の合コンを思い出しました。相手の一言からキーワードを拾って精一杯広げる会話をつなげる。昔とったきねづかです。活用して頑張ります。
⇒おっしゃる通り、実際は比較データは平均値等に加工したものを提示すべきですね。
・現場でそのまま使える内容だと思いました。
⇒ありがとうございます。ぜひ使ってください。

【農家の経営上の課題】
・気象・相場等による収入の乱高下。 コスト意識を常に持つこと。 人材不足、募集をかけても集まらない。外国人も来日できない。
⇒どれも問題ですが、収入の乱高下という点は経営力で対応できるところもるかもしれません。

・所得についての意識があまり高くない
⇒ですね。
・雇用形態の確立が難しい。所得の把握ができていない。
・生産面(収量)などに目を向けがちで、経営面(コストなど)のことをあまり考えていない。
・決算書はじめ個々の経営実態に踏み込むため、相互の信頼関係の構築が何よりも大事だと思います(信頼関係)。決算書を見せてもらえたら、事前に十分分析して相手に納得のいく説明をしたいです。
⇒分析の都度農家に決算書をもらうような業務の組み立てでは、継続は難しいでしょう。
・自分や家族のライフプランを考えた経営ができていない。(申告書を見るとどうやって生活しているのか?と思う農家が多い) 自分で考えずひとにやってもらうという意識の人が多い。
⇒支援者と農家の共依存関係があるのかもしれません。
・所得率を考えている方が少ないのでは。農業にしても10aいくらかかります!!と細かに指導をやりたいと思いました。
⇒それをやると10aあたりのコストを計算する羽目になりますよ。
・兼業農家が大多数なので経営感覚がない。
⇒・・・・担い手対策ですから
・どんぶり勘定になっている方がおられる
⇒おられますなぁ。
・技術面に食いついてくれる農家は多いですが、コスト面等に意識が向いている農家が少ないと思います。「経営分析結果を返したい」と言っても「忙しいから、少しだけ」とか「また今度にして」とか返されます。興味を持ってもらえるような投げかけ方ができるように努めたいと思います。
⇒なぜ農家がそのように避けようとするのでしょうか、興味深いです。

【組織の課題】
・対象人数が少ない。一人に対して多く時間がかかる。 組織の人事異動により引継ぎ不十分な場合は、誘導する方向が変わってしまうこと。 「言われた通りにやったけどうかくいかんかったぞ」と言われないように具体的な提案は避けるきらいがある。
⇒誘導しようとするのは、支援者の自分の答えがあると思っているから。そして自分の答えを作るの時間がかかるのでは?

・経営分析の具体的なやり方を教えてもらう機会が少なく、人によって分析のレベルがバラバラ
⇒ありがちですね。マインドもバラバラです。
・わからない。
・担当者が苦手意識を持ったまま支援にのぞむので、生産者のためになっているのか不明
⇒苦手意識をどこで持ってしまったのか?気になるところです。
・経営担当(地域)係以外の係(野菜・花・果樹)の一部は「経営」に疎い。 JA共販が主な産地は、販売面をJAに任せにしていることが多いため、農家の一部も疎い?
⇒販売をJAに任せても経営意識をもつことはできますよ。
・全体の目標設定がなく、担当者によって支援の濃淡がある。担当が移動すると続けられなくなることがある。
・経営支援できるまでのJA職員の知識が足りない 普及所と一緒になって行う。
・行政の支援がなくては農家の支援はできないと思うので行政との協力関係。
・職員数減少で、業務過多になり時間があまり割けないところ。
⇒どこでも聞く話ですね。
・経営支援は、基礎知識がないとダメと思っている固定概念。知識無くてもOK、仮説でOK、先生の言葉に励まされました。
⇒はい、その通り。よく学んでいただきました。

2年連続でコロナ禍での開催で、今回は緊急事態宣言中だったからか、参加者数は少ない方だったと思います。
それでも、集合研修会場としては非常に対策が整っており比較的安心して研修会を進めることができたと思います。

今年も事務局を務めて頂いた重松副部長、小山さま、中山さま、大変お世話になりました。
今後もどうぞよろしくお願いします。