JA営農指導員・県普及指導員合同研修会(沖縄)

標記の研修会が2021年9月9日~10日の1.5日の期間で開催され講師を務めました。主催はJAおきなわで、参加者は普及員8名、JA28名、事務局3名と合計で40名弱の参加となりました。
弊所は沖縄での仕事は初めてで、訪問することを楽しみにしていましたが、時節柄オンライン(Webex)で沖縄と埼玉を結んでの開催となりました。

オンラインであることから弊所もまだ慣れないこともあり、一部不通になったりするトラブルもありましたが、事務局の入念な準備や速やか対応のお陰で大きく崩れることなく、最後までやりきることができました。また参加者は、グループ演習の回答などを見る限り、よくデータを読み込むことができていると思われ、基礎的な能力の高さを感じました。今後の業務の発展が楽しみです。

 

【研修内容】
1.支援マインド
2.農業経営管理支援の事業戦略
3.経営分析の実務
4.経営分析演習
5.事業と生活の計画

【アンケート結果】

1.支援マインド
(大変良かった:63.6%、良かった:31.8%、普通:4.5%、悪い:0%、非常に悪い:0%)
2.農業経営管理支援の事業戦略
(大変良かった:40.9%、良かった:54.5%、普通:4.5%、悪い:0%、非常に悪い:0%)
3.経営分析の実務
(大変良かった:54.5%、良かった:36.3%、普通:9.0%、悪い:0%、非常に悪い:0%)
4.経営分析演習
(大変良かった:50.0%、良かった:45.4%、普通:4.5%、悪い:0%、非常に悪い:0%)
5.事業と生活の計画
(大変良かった:40.9%、良かった:50.0%、普通:9.0%、悪い:0%、非常に悪い:0%)
6.総合評価
(大変良かった:54.5%、良かった:45.4%、普通:0%、悪い:0%、非常に悪い:0%)

【研修内容について】
・たいへん勉強になりました。特に、要所で演習がありアウトプットになり良かったです。
⇒ありがとうございました。

・経営指導だけでなく、現場での技術指導に活かせるような内容でもあったのでとても良かったです。

・説明等大変わかりやすかった。その他、知らなかったことも多かったが、考え方についても変わるきっかけとなった。

・【良かった所】「経営に関する講習会」を受講するにあたって聞いたこともない難しい単語の羅列で大変そうだな、と想定していました。実際に受講したところ、まずは農家に経営指導を行なっていく際の「マインド」について、人対人の関係性の中で大切な部分を意識し、あまり「指導」に固執しすぎない事が大切だと気付かされました。普及が目指す「考える農業者の育成」に繋がる部分なので、今回の内容も頭の片隅においた上で業務にあたっていきたいと思います。
⇒いや、「頭のど真ん中」でお願いします(笑)

・【感想】コロナ禍のなか、リモート形式で有意義な研修に参加できて非常に良い機会になりました。ただ、JAの方と直接お会いして意識共有を図る等の機会は滅多に無い(昨年採用時点でコロナ流行なので、普及関係の人すらあまり知らない)ため、便利とはいえどやはり集合で参加できればなお良かったなと思いました。開催していただきとても感謝しています。ありがとうございました。
⇒おっしゃる通り、集合研修で直接顔を合わせた方が交流などもよくできますよね。

・農家の経営支援の分野で、普段聞けないような内容だったので勉強になりました。

・農業経営について知識が全然ないので敬遠していました。今回の研修で支援マインドのお話しや演習等を通して、専門知識がなくても現状を認識する手助けができればいいとわかって、経営に対する苦手意識が薄れました。
⇒はい、その通りです。無駄に大きく構えたりしないことです。相手(農家)も疲れます(笑)

・他の職員の意見も聞けた事が良かったと思います。
⇒他県でもそのような声をよく聴きます。グループワークなどの狙いの一つですね。

・web環境をもう少し整備した方がいいと思う。その他のweb研修でもとまったりすることがある。
⇒私の方も2度ほど固まったりして、大変失礼しました。

・事例と演習を交えた研修内容で、わかりやすくとても有意義な研修でした。

・演習を実施することで、より具体的に経営支援のことについて学べたと思った

・決算データ分析をする際、所得額をみるだけでなく、経費の内訳や所得率、出荷量や単価など様々な要因に着目する必要がある事がわかった
⇒ブレイクダウンしながら見るという事ですね。いろんなことに共通して言えますが。

・私は、記帳代行4年目になります。支援マインドについての考え方は、とても新鮮でした。経営支援について、これまでは、こちら側から画期的な提案策などを提示しなければならないという考えに縛られていたように思います。かつその状態を自覚することもありませんでした。今回の研修を通して、農家さんの内発性に目を向け、本人が本当に望む目的に向け支援することの大切さを感じました。そういった意味では、コーチング(コーチのクライアントの関係)に近いなと感じながら研修を受けていました。また、日々の帳簿付けは、確定申告だけでなく、経営課題の現状把握につながるという内容も印象に残りました。今後、定期開催(月1回、30分程度)している新規就農者向けの勉強会の中で、農業簿記(仕訳や帳簿付けなど)、経営分析について取り上げる予定です。今回の研修で学んだことをもう一度自分自身で理解し、活かしていきたいです。貴重な研修、本当にありがとうございました。
⇒コーチングをご存じなのですね。どうりで素晴らしい理解をされている。

・みんながそれぞれ考えるので他の人の意見を聞けるのは、正解不正解に関わらず参考になった。
⇒ですね。

・今回の研修で、特に重きを置いていたと思われる支援マインドについては、普段の経営支援から意識していたところでしたが、改めてその意識を深める必要を感じました。また、農家が自身の経営目標を常に意識しながら経営改善・発展に取り組めるようなモチベーションを上げるアドバイスが出来るように日々の業務に取り組みたいと思いました。

・経営していく上で、販売金額が良くても生活面で浪費したり、一見売り上げが良くても借金を抱えたりなど、農家さんの経営を一面で捉えるだけでなく全体を把握して考える必要があると感じた。通信が途切れたのが気になった。
⇒おっしゃる通り、販売高だけ見ててもダメだし、所得だけ見ていても実はダメというところです。通信が切れたのはすみません。

・指導員等が提案等を押し付けるのではなく、農家目線に立ち農家に考えさせるという発想

・良かったところ:WEB研修自体が初めてだったので、各地区様々な意見が出てよかったとおもう。また、経営分析を行う上で、比較対象の取り方をはじめ、いろんな見方評価の仕方もあるのだな、と感じた。

・悪かったところ:回線トラブルが多く会議に集中できないことがあった。
⇒すみません。

・支援マインド。その通りだと思った。

・経営支援で大切な事は、専門知識をもって良い提案をすることではなく農家さんとの信頼関係、尊重する気持ちをもって農家さんの中にある答えを引き出すこと。この言葉が心に響きました。
⇒そして尊重とは可能性を信じる事です。

・演習やグループワークを交えながらの研修で今後の経営支援をする上での流れみたいなものが自分の中で少し掴めたので、現場でいろいろ試してみたいと思いました。
⇒どんどん試してください。

・お忙しい中、有意義な研修をありがとうございました。
⇒いえ仕事ですから喜んでやります。

・記帳代行業務は比較的順調に展開されている、しかし、経営分析業務であまりにも深く考えすぎて、出口が見えない状況であったが、今回の研修で戦略が見えてよかった。
⇒記帳代行が経営支援の中でしっかり位置づけられていないことが、多くの県(JA)の共通課題です。

・経営分析演習はあまり慣れてないうえに、リモートでのグループワークだったので、難しかったです。後半の研修が駆け足気味だったので内容を絞るか、研修時間(日数)を増やしてほしかったです。
⇒気味ではなく、走り抜けました(笑)。オンラインだったという事もありますが、時間の見積もりに失敗しましたね。すみませんです。

【農家の経営課題】
・研修の中にもあった通り、将来を予想して計画を立てることが課題だと思います。
⇒一人ではなかなかやらないものです。

・農家本人が経営について理解が薄い事だと思います。販売金額や単価、資材代のような身近な事ばかり見ている気がします。経営改善する為には、それ以外の事も見ていかないといけないと感じました。また、適正な栽培面積を把握できていない事です。人手不足なのに、面積を増やすことなどが多々ある為です。
⇒ですね。経営者でなく現場担当者の目線なんですよ。大きくさせようとするのは、農家本人だけじゃなかったりもします。

・経営に無関心、当事者意識が薄いことが多い農家さんに対してどれだけ具体性を持って自身の経営を俯瞰で見てもらえるか。
⇒当事者意識を薄くしているのは何か?本当に当事者が当事者意識を持たないことが有り得るか?など自問する日々です。

・経費と販売金額が見合わない農家が多く見られるので、そこを改善していきたい。

・当事者意識が低い農家がいると感じることがあります。具体的には、何作ったらいいですか?と尋ねてくる農家など。自分の生活がかかった経営なので、人任せにしてはいけないのではと感じます。
⇒貴方はどう思いますか?そう感じたのは何でですか?と質問を返すことから対話が始まることもあります。

・経営分析をするうえでもっと具体的に経営分析していかないといけないなと感じるました。

・生産者の経営に対する目的や目標を明確にすること。
⇒引き出して聞いてあげて下さい。

・所得を上げている農家は、先の見通しを立てて作業している。

・所得が上がらない農家が、いかに自分自身の現状を把握し、課題解決に向けて取り組んでいけるか。

・農家所得向上のためにも管理可能な範囲での規模拡大が今後必要になる。
⇒適正規模ですね。これは各々違う。

・農家さんは節税するために所得を出来るだけ下げる為に経費を増やしたりしているので、自分の所得率とかは気にしてないように感じる
⇒そういうことを言う人がたまにいますが、税金は所得の数%ですから、費用を多く支出して所得を減らしても、使った費用の税率分のお金しか節税できません。つまり無駄遣いの額は節税額よりも絶対に多くなるので全く得にはなりません。

・記帳代行利用者の方は特に、会計・税務についての理解・関心が低い方が多いように感じます。「JAに任せているから大丈夫」、「確定申告ができればOK」という方が一定数いると思います。そのため、決算書(損益と貸借)が読めず、経営の中身を数字で理解しようとする力が不足していると思います。
⇒微妙なとこですね。経理は任せてもらっても、内容は理解してもらうべきです。よく例えるのですが、豊田自動車の社長は自分で会計仕訳を起こしませんよね。でも経営はわかっている。この状態をJAと農家の関係で目指したいものです。

・経営者としての意識の無さ。現状の把握と目標がない。
⇒だから手伝ってあげる人がひつようなのです。

・農家自身の経営結果(決算等)に関する振り返りが出来ていない部分や経営目的に対する現実的な目標設定と将来を見据えた観点(投資するタイミングなど)が不足している点だと感じます。

・私の地域の特徴かもしれませんが、多品目栽培が多く、収穫の最盛期が重なって栽培管理が行き届いていない。病害虫の防除の遅れや収穫遅れなど。

・経営者としての自覚向上、経営内容把握について無関心
⇒そこを支援するのが本当の支援。特定の手法や内容を提案することではありません。

・農家所得向上を目指すなら、
①経営の維持と向上のために、収入を上げることが重要
②かけていい費用と、抑えなければいけない費用を見極める
③ライフスタイルを考慮しつつ、安定した所得に導く

・現状把握ができてないと思う。

・それに向けた、対策などが見えにくく、改善に向けた取り組みが取りにくいのかと思う。

・記帳代行を利用している大体の人が支払う税金に気を取られすぎて、赤字が出た時の危機感がとても薄い。その反面、運転資金や施設、機械導入する時に借入をしようとすると過去の実績で利益があまりないためできないという事があり、そこでやっと自分の経営意識するというパターンが多くみられます。
⇒税金を払っても所得を出した方が得なんですけどね(笑)。

・作物を作ることはそれなりにすごいですが、収益性(反収・単価)を比較的軽視している。今後、規模拡大も大事であるが、特に収益性を重んじる経営、すなわち、生産技術・経営分析に関心を持った経営姿勢を持ってほしい。

・農業収入の安定化。

【組織の課題】
・担当者や担当品目が3年で変わるため、農家との信頼関係の構築
⇒長ければ長いでいろいろ不都合もあると思います。コミュニケーションの取り方によっては3年は充分な期間かもしれません。

・特になし。

・普及は圧倒的に人員が足りず、地域全体への経営意識向上に繋げられる業務を十分にできる環境にはないのかなと感じます。JA含めた関係機関との連携が何より重要かと思います。

・人手不足
⇒どこでもそうですね。

・下記の経営コンサル等について、やりっぱなしで農家へのフィードバックがうまくできていないと感じる。
⇒ヤリッパは各地でみられる現象です。”コンサル”をやることが目的化しているのでしょう。

・組合員とのコミュニケーションズをとり信頼関係をもっと築いていかないと思いました。

・特になし

・マンパワー不足。
⇒どこでもそうです。

・JAとの連携不足。
⇒これも各地で共通する課題ですね。JAの場合は内部連携も課題。

・生産コスト低減化のための栽培管理技術の確立

・農家さんの生活まで考えた支援ができていない
⇒やっちゃえやっちゃえ(笑)

・営農指導員、経営専門員のJA内の情報共有、普及員などJA外との連携が少ないことだと思います。
⇒全国共通課題。

・農家に優しくしすぎていたのかと。農家が自立できるようなサポートが必要。
⇒「優しくしすぎる」ことはかならずしも尊重することにはなりませんね。

・経営データの不足により他農家(他地域など)との比較が出来ない点
⇒データがあることの理解が不足しているのかもしれません。

・農家さんに、具体的に生活面も含めて経営指導出来てないと感じる。技術指導は、営農指導員でしていくが、未収金などの債務を抱えている農家もいるのでそういった方のフォローが必要。
⇒個人的には新規就農者を増やすより、現存の農家を潰さないことの方が圧倒的に重要と考えています。

・試算表等データや前期比較だけでなく、品目の反収量や秀品率などのデータも活用していくこと
⇒反収以外は、JAの販売精算データとして日々蓄えられています。

・課題があるのかがわからなく答えられません

・演習でもあったが、全て準備してその通りやって下さいとなっているところが、課題だと思った。

・生産者も、少なからず原因、要因等は持っていると思うから、そこに一緒に入って、改善に向けて取り組んだ方がいいと思った。
⇒賛成。

・内部での理解があまり進んでいないため地区によっては事業がやりずらいところがあるのが課題。
⇒内部理解を進めるためにはどうしたらいいでしょうか?

・特に経営分析業務について、あまりにも深く構えすぎて、これまで一進一退を繰り返ししている状況であった、今回の研修で一歩、できれば2歩前進させたい。
⇒遠慮せず100歩ぐらい行っちゃってください。(笑)

・組合員の農協離れ。技術指導や何か問題があったときは農協を利用するが、農協以外で主に販売している組合員さんがいる(直販等)。組合員の所得向上の為なら仕方がないことなのか。
⇒農家の意識が高くなると、系統外利用が増えるのはある意味仕方がない、というか必然のような気がします。その中でNo1の存在になるということでしょうか。

【今回の研修で取り入れたいこと】
・2年目から経営指導やコンサルも入ってくるので、今回学んだことをぜひ生かしてみたいです。

・営農指導(栽培技術)がメインではあるが、それより一歩踏み込んで、農家本人の経営のあり方を対話したりする事で、収量や販売金額が大きく増加しなくても、経営上上手くいくようなサポートが少しでもできればいいなと感じた。
⇒ですね。デカけりゃいいってもんじゃないですよね。

・認定農業者の申請支援業務にも携わっているので、ただ事務処理を行うのではなく一人一人の農家さんに向き合って、より良い経営状況につながるような機会になるよう意識的に気付きや目的、目標を掴むために誘導出来るような接し方を心がけてみたいなと思う。
⇒素晴らしい!・・誘導という言葉はちょっと危険ですけどね。

・資材、農薬等を効率良く使用してもらい、反収を上げ、経費削減に努めてもらえるよう頑張っていきます。

・普及では経営担当でなくても1人1農家の経営コンサル、カウンセリングの提出があるので、今回の研修で学んだことはその取り組みにとても役立ちそうだと感じました。
⇒よかったす。

・明確な生産量や所得目標の意識付けを持ってもらえるように対応していきたい。

・JA職員と今以上に連携すること。
⇒普及の人は優秀ですからJAも心強いと思います。

・対象農家には、JAの記帳代行システムを利用している方もいらっしゃるので、その方々の経営分析を行い、改善するところがあれば、支援したい。
⇒記帳代行をやっている担い手農家全員に経営分析をやりましょう。

・農家の品目ごとの年間所得や経営状態の分析
⇒品目ごとの所得って大変なやつですよ。

・農家さんと決算データ分析をする時間を取り入れたい

・内発性の重視です。対話の中から、農家の望み(将来の夢など)を理解し、必要なサポートをしていきたいです。
⇒よろしく!

・これまで以上に、農家の経営目的や年齢、家族構成などを考慮した経営目標やライフプランを理解した上で、将来を見据えた計画を一緒に考えていきたい。
また、点(個々の農家)ではなく面(地域)を意識した支援を継続する必要性については、非常に共感しました。
⇒いいすね!

・生活面も含めて、経営状況をしっかり数字に表して、生活費や老後も含めて今から、計画的に一緒に考えていけたらと思う。
⇒がんばって!

・品目・秀品率などのデータの活用
⇒活用しましょう!

・農家さんの生活スタイルにどこまで言及できるか不明だが、支援農家をつぶさないために寄り添える指導員になりたいと思いました
⇒寄り添うっていい言葉ですね。生活スタイルを変えろ!という姿勢は絶対ダメで、基本は農家に現状確認と将来像を描かせることだと思います。

・生産者に、現状把握の手伝い、そこから改善に向けた対策を農家主体で作成し、取り組みをしていきたいと思った。
⇒やってください!

・今まで簡易分析表を配布していたのですが、配布止まりで中々の次のステップに踏み込む事が出来ずにどうしようかと悩んでいましたが、今回の研修で学んだ分析の方法を活用し、個別面談を実施してみようと思います。
⇒研修にはフィードバック編もあります

・JAにあるデータを駆使して事業に活用したい。

・農家が自分の経営課題に自分で気づくようなプロセスを心掛けたい。
⇒100点です!

 

以上、一日半の研修でしたが、トラブルもありつつ何とか終えることができました。これも前田さん等の事務局のお陰だと思われます。
もし次回が有るなら、皆さんと直に接しながらやってみたいものですね。固まることもないですし。(笑)

今後もどうぞよろしくお願いいたします。