担い手支援担当者等研修会(経営管理実務コース)(福岡)

2024年9月26日(木)~27日(金)に表記の研修会の講師を務めさせていただきました。この研修は2015年から開催しているので、ちょうど10年目になります。ありがたいことです。
参加者は、JAから3名、県普及センターから18名の合計21名です。最近福岡県ではJAよりも県職員のほうが出席が多くなっています

【内容】
1.支援マインド
2.農業経営支援の実務
3.経営分析演習
4.農業経営管理支援の事業戦略
5.事業と生活の計画
6.コンサル実務(補論)

昨年は、最後に、コミュニケーションスキルを行いましたが、今年は福岡では初めてコンサル実務の一部を行いました。

【アンケート結果】
”大変良かったが”全体の6割を越えたことから、受講者の方々に満足いってもらえたものと思え、安堵しております。

【研修内容について】
○支援マインドを理解することで農業経営支援の目的が明確になった。
○数字を分析することで現状を把握することができ、課題がみえた。経営分析は難しいものと思っていたができそうな気がした。農家へのフィードバックが問題の解決にならず、答えは農家に求め、目標を定めさせることが良いと思った。
○研修会内でアウトプットが多く、身についた研修会だった。
〇農業経営担当2年目で経営分析がどんなものか具体的に分かっていなかったが、今回の研修で経営分析は比較して仮説を立てること(それ以上は必要ない)であると分かった。
○経営についての基本的な知識がないまま研修を受けましたが経営分析など、自分にもできることがあると研修で感じることができた。
○経営の研修はいくつか受けてきたが、ここまで実務に沿った研修は今までになかったもでとても参考になった。またグループワークにすることで様々な人の意見を聞くことができてとても参考になった。
○経営管理支援は何度かやってきたが、‟支援マインド”が抜けていたと感じました。こちら側の思うように誘導するのではなく、相手に気づきを与えられるような支援ができるように頑張っていきたい。有意義な研修になった。
○実務に則した内容だったので、普段の業務でやってきたこと、やれてないなかったこと、認識が足りていなかったことを振り返る機会になった。自分の支援が農家にとっては押しつけになっていないかもう一度見直したいと思った。分析においては、先入観を排除して臨んだ方が見えてくることが多くあるということを実感できた。「経営支援」というと難しいイメージがあったが、今回の研修で特別な知識はあまり必要なく、農家などと一緒に何か考えていくだけでも良いということが分かり、ハードルが下がった。
○グループでの演習含め、実践的な内容で分かりやすかった。支援するにあたってのマインドなど初歩的かつ重要な部分について考え方から学ぶことができ、参考になった。経営分析支援のハードルが下がった。
○専門的な経営手法ではなく、支援マインドや農家が意思決定をするための支援の仕方など、自分自身も考えながら学ぶことができた。経営支援への漠然とした不安がだいぶ少なくなった。地域農業の支援という本来の私たちの仕事のスタンスに改めて立ち返る事ができた。JAなど関係機関とうまく連携して経営支援を行っていきたい。
○経営分析には専門的な知識が必要だと考えていたが、経営データを大きな項目から細分化し。比較対象と照らし合わせることで、専門的な知識がなくても課題を推察できると分かった。また、課題を見つけた際も一方的に伝えるのではなく、仮説として提案し、生産者が主体的に取り組むよう促すことが大切とも分かった。さらに今回の研修で使用したデータは現場で取り扱うよりも多く、まずは十分なデータを収集することが必要だと分かった。今後の業務では、適切なデータを収集し、仮説を生産者とともに解決していくための支援を行っていきたい。
○数字を見て、正解を提案するのが経営分析だと思っていたため、寄り添うことが大事だと感じた。ただし、数字を読み取ることも信頼の後押しとなるのでそこも押さえようと思った。
○もっと早い段階で受講しておけば経営相談に対して変な苦手意識を持つことなく取り組めていたと思った。
○農業経営管理支援に対する心構えについてや、分析の意味について確認することができた。分析目的がはっきりしていれば、よりデータを読み込めるのだということが分かった。
○経営支援をする際の心構えが間違っていたことに気づかされた。自信がない分野だからこそ、しっかりとした改善策まで提案しなければと、空回りしていたと思う。今後はもう少し肩の力を抜いて農家さんとコミュニケーションをとりながら取り組みたい。
○農家への接し方の話が心に刺さった。農家と対等な関係で話すようにしていきたい。また、分析=現状把握であるという考え方はすっきりした。演習では何を目的に分析するかを最初に考えるようにしたことが今後の業務に役立ちそうだ。

【農家の経営上の課題は】
〇目的がはっきりと決まっていないことが課題だと思う。目的が決まっていない分、今すべき行動ができていない。
○経営に対する意識、問題意識。相談してくれる、コミュニケーション、信頼関係。
○経営の見直し。
〇経営データをじっくり見て分析するのに時間が足りていない。
○経営支援の際、収益をあげることに意識が向きがちであった。栽培管理において、費用対効果がよく検討されていない(病害虫防除に必要以上の薬剤数が使われている)。
○研修の中でもあったが、長期的な視点を持っていない方が多い。
○記帳ができていないこと(労働時間、家計費含めて)。
○数字を把握していない、目標をもって経営をしている農家が少ないため、「自分が社長である」という意識づけが課題だと思うし、そのような意識を持つように誘導しなければならないと思う。夫が栽培管理、妻が経理を担当している場合が多い。担当分けをすること自体はよいと思うが、互いの担当している内容を全く把握していないというのはよくないのではと考えてしまう。
○自身の経営状況を把握していない。特に、費用面は聞き取りしても把握できていない部分が多く感じる。また、日々に追われて将来のビジョンまで考えられている農家は少ない。
○農家にも色々な方がいると思うが、新規就農者や若手生産者だと、生活を踏まえた所得目標の設定の意識があまりなく、自転車操業となっている事例がよくある。将来を見据えた営農計画を就農開始時にしっかりと立てておくことが大切だと思う。
○目標・目的が明確でないこと。担当している生産者も売上2千万を目標としていたが、経費のことは考えていなかった。生活費がどれぐらいだから、所得を○万円というようにした方が経費についても言及しやすいと感じた。
○現状を知る。何を目指しているか。
○自身の経営状況を把握できていない。手段(品目転換)で劇的に経営が良くなること思っている。周りの生産者に流されやすい。
○景気や気象状況により、販売数や販売単価が変動すること、農家自身が経費や労力に見合った価格決定権がない場合、収入が年により変動が大きかったり、収益が出なくなったりすること。資材、輸送費、光熱費の高騰等によるコスト上昇。最低賃金上昇による雇用者の一日当たりの労働時間が少なくなってること。
○自身の経営を把握していないこと。

【組織の課題は】
〇個人で相談を受ける機会が多いので問題を協力し、チームで解決する。
〇普及が農家の経営管理にあまり入り込めていない。(都市部に近く、開発がすすむ地域なので地域的な問題もあるかもしれません)
○経営支援に使用するデータを収集するのに時間がかかる。JAから出荷データをもらうことはできるが、その都度農家の承諾や印鑑が必要。
○人の数でスキルが限られている中で経営分析をとばしてコンサルをやろうとしすぎていると思った。もう少し農家に教えてもらう方法にしたら良いのではないか。
○経営支援に対する意識に濃淡がある。支援対象農家や経営支援以外の業務の状況が異なるため、きっちり足並みを揃えるのは難しいとは思うが、意識の差が大きいと効果的な支援ができないのではないかと思う。(こちら側の意識づけの機会の不足ややり方の問題ではあるとは思うが…)
○経営分析でコンサルが混同されている部分があり、コンサルを行う対象の選定基準が曖昧であったり、対象が多く十分な支援が難しい面があると感じる。
○普及センターが支援対象として設定している経営体はJAと相談して決めたものではなく、普及センターの判断で抽出・設定した経営体となっている。このため経営支援に関してJAとの連携がとれておらず、一部の経営体への限定的な支援になっており、地域農業の支援には繋がっていないと感じる。JAの記帳代行の話を聞いて、経営分析・コンサルの前提としてこうした仕組み作りが大切で、まずはその体制づくりをしていく必要があるのではないかと感じた。
○組織的な経営支援。今はほぼ一人が一人の生産者を担当しているため様々な視点からの助言ができていない。
○マインドの共有
○経営相談において正解を与えようとするあまり、「品目転換」などで手段を押し付けている場合がある。販売については専門外のため、販売戦略についての相談に対応できない。
○若い職員が多いので、先輩の活動を見て学ぶ機会が少なくなっていること。



以上、福岡を含めどの県も普及Cの人は、基礎能力が高いので、グループワーク等での発表や意見などは、講師としても非常に刺激になります。
JAグループの職員がもっと多ければ、もっとお互いの刺激になり、今後の事業連携も期待できたのではないかと思います。

彼らの業務に今後も資することができるよう、弊所も頑張っていきたいと思います。

最後になりましたが、事務局を務めていただいた石井様、三浦様、大変お世話になりました。
形が変わることがあっても、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。