農家経営分析診断・コンサル担当者研修会 ー2023前期ー(長崎)

2023年7月19日~21日の3日間、標記の研修会が開催され、講師を務めさせていただきました。長崎に来るのは12年目です。

主催は、JA長崎県中央会、長崎県農林部、農林中金長崎支店で、会場は出島のJA会館です。

出席者は県内7JAから21名、県振興局5名、全農長崎3名、農林中金1名、関係団体2名の合計32名となりました。

【研修内容】
1.支援マインド
2.農業経営支援の実務
3.経営分析演習
4.農業経営管理支援の事業戦略
5.事業と生活の計画
6.経営分析面談
7.コミュニケーションスキル

【アンケート結果】

【研修会の良かったところ悪かったところ】

・支援マインドや経営分析の着眼点など参考になった。経営分析では、各品目の経営指標について、ある程度把握しておく必要があると感じた。
・事業と生活の計画では、ライフプランシートの作成が必要である事が認識できた。
・経営分析面談では支援マインドを認識し、相手の話を良く聴いてのぞむことが大事である。
・コミュニケーションスキルでは、相手との会話を広げるオープンクエスチョンが参考になった。
・経営支援業務で大切なことが農家との信頼関係、支援する農家を尊重する気持ちが大切だという事が分かってよかった。 
・コミュニケーションはとても大事だと思った。
・改善策を引き出す方法は一つじゃない。
・講義・演習についてどれも関心が深く、どれも興味を持って望めた。
・より実践的で現場に近いシチュエーションにより演習・講義の例が分かりやすく面白かった。
・毎年、コミュニケーション能力がなくなっていっていると実感していた所今日のような演習をきっかけに、また伸ばしていきたいと強く思えました。
・経営分析については、今まで、経験がなく勉強になりましたが、時間が足りませんでした。
・普段の業務では経営分析に関わる事がなく、内容を知る事が出来てよかった。コミュニケーションスキルでは仕事以外の場面でも有用なので日頃から意識して利用してみようと思った。
・考えを広げる、考えてもらうなど、農家に行動を促すようなコミュニケーションの取り方など普段出来てなかった事に気づかされた。
・発言を求められるため、緊張感をもって研修に臨むことが出来た。イメージしやすい話題が多く、身近な問題に重ねて考える事が出来た。
・楽しい研修でした。とても分かりやすい!
・コミュニケーションスキルのところでオープンクエスションとクローズクエスションを使い分ける事によって、相手から沢山の情報を引き出せると感じました。
・まず、経営分析において専門知識が一番必要不可欠だと思っていましたが、そうではない事を知れてよかったです。
・今回の研修でコンサルの内容について詳しく学ぶことが出来てよかったです。実際の決算書等で演習を行うことで、より詳しく理解が深まりました。今後は、今回学んだことを農家さん経営に活かしていきたいです。
・営農的な目線で今まで農家さんたちと接していたが(販売金額や栽培指導)、今回の研修を受けて、更に入りこんでいく(経費など)事で、農家の経営改善に繋がっていくと思う。木下先生の話し方がおもしろく、楽しく、ずっと聞き入った。後期の研修も楽しみです。
・話の内容や話し方が素晴らしく、非常に聴きやすかった。話すスピードが早く、聴きにくい場面があった。
・経営分析の細かい見方ではなく、実施にあたっての考え方等を中心に分かりやすく説明していただいて非常によかった。
・様々な事業の方が参加されており、考え方や視点が異なっており、大変参考になった。主な担当業務が、事務処理が多いので農家の販売データを元に分析するという部分が大変勉強になった。
・実際の申告書を見ながら分析の演習が出来た点は良かった。話法についても学ぶことができ、有意義だった。
・経営不振の農家への接し方について分からないまま今までやってきましたが、基本は農家さん自身に教えてもらうという事で勉強になりました。農家さんの話を聞くことを意識して業務にあたりたいです。
・ペア、グループワークが楽しかった。経営分析をもっと深く知りたい。木下先生の話が聞きやすく、楽しく研修を受けることが出来た。
・座学での基礎を学びつつ、演習を行えたので、大変勉強になりました。
・所得の計算やライフプランシートの作成は難しかった。経営分析演習はデータ量が多く、知らないことも多くあったが、総じて参考になった。興味のある事、知りたいことだけ農家に聞いてしまう意識を改善し、関係性構築を大切にしたいと思う。
・実務のシーンでの会話例も合わせて説明されていた事で、すぐに実践する事が出来ると感じた。
・演習に用いる資料は別冊にされていると、見やすいと思う。
・とにかく知識が必要なんだなと思い込んでいましたが、違い、少し気持ちが楽になりました。
・正しい質問方法や、聴き方、説明の仕方を改めて学ぶことが出来た。また、農家の方々と話すことが多い私にとって、とても参考になりました。
・経営分析や面談時のスキルに限らず、日頃の業務やプライベートでの人間関係構築のためにも役立つことを学べたことが良かったです。傾聴時の姿勢などは、早速今日から実践していきたいと思います。
・作物の事、シートの作成方法等、知識取得の研修であると想定していたが、実際は知識も大事だが、農家さんとのコミュニケーションをとる対話が何よりも大切であると実感した。

【農家の経営上の課題は】

・自身の経営状況や、将来のビジョンを持って営農をされている農家さんは身内では少ないように感じる。 
・経営承継直後の若手農家などが、自身の経営の状況等をあまり把握できていない事がある。肥料資材価格の高騰により費用と収入のバランスや将来設計を考える事が難しくなっている。
・継続率だと考える。物価上昇や、助成金の減少などにより所得率が減り農業経営を、継続できなくなるので、それらの対応を考えなければならない。
・危機感がない。
・数値をなんとなくの感覚で理解している人が多い。
・自身の経営を見つめなおす機会の乏しさ。
・前年と同じでいいかという人が多いように感じることがある。
・労働力不足(若手等)。経費で圧迫。老朽化。自己分析が出来ていない。経営が自分で出来ていない。
・自分の出荷量を把握していない人がいる。自分のキャパを超えて肥料や苗を買ってしまう人がいる。
・雇人費や動力高熱費等、見直せる部分を見直す対策が必要と感じた。
・管内には個人で製茶工場を所有する茶農家が多く、機械が高騰する中での工場の更新が課題。
・経営の内容、(経費や所得)を知らないということ。経営が悪くなると原因を外に求めようとすること。
・後継者不足。後継者がいないために、廃作し、面積の減少。近年の資材や肥料の値上がりにより、経費の圧迫。
・販売金額が経済の動きに左右されやすい。今は、物価高騰で費用の支出が大きくなりやすい。高齢化。
・物価上昇していく中でどうやって経費削減し所得を大きくしていくか。
・単年度でしか見れていない。なので長期的に見させる事により、具体的に経営を考えさせる事が出きると感じました。
・どんぶり勘定だという事にきづいていない。
・自身の裁量でどうにもならない外的要因(販売単価・資材費等の経済変動)が大きすぎる事。
・何かしらの楽しみがない。
・畜産で、飼料価格の高騰、内販売相場の安値。
・モチベーションの維持、JAとの連携。
・高齢化による規模縮小、後継者不足。
・相場の変動(販売単価・肥料価格等)による収入の不安定。後継者不足
・担い手不足(労働力が1ないし2人の農家で後継者がいない)。経費の値上がりに対して販売が追いついていないのでは?国の事業が本当に助けになっているのか。何が悪いという意見は良く聞くが何しているか知らないこと(互いに)。
・目標、目的をはっきり持ってもらうこと。
・周りの農家がやっているからという理由でそれぞれのペースではなく、無理して経営を行っている事。
・生産資材等が高騰しているので、生産コストの縮減意識を持ってもらい生産性の向上に取り組んでもらう事。労力不足もあると思うので労力確保も必要になってくると思われる。

【組織の課題は】
・あくまで当支店の場合だが、部会での経営診断をあまり実施しているようには見受けられないので、小さな支店にも目を向けてほしい。
・経営担当者以外の職員(各品目の担当指導員など)の中には、しっかりとした知識と経験がなければ経営分析、支援が出来ないと思い込んでいる人が多い事。経営分析や面談は難しいものだという先入観があること。
・情報力を高める事(個人情報を少し見る)。←許可を得る。
・結果がすぐ出ないものはやりたがらない。
・農家の相談に乗れる人が限られている事。(一つの産地に一人しかいない等)
・例えば、産地最寄りの支店に一人、中央のセンターに一人それぞれ配置するなどしてほしい。
・経営支援自体を難しく考え、実際に取り組もうと前へ進めない事。
・人手不足、業務多忙、コミュニケーションスキルが低い(聞き手)。
・経済課との連携がとれていない。農家さんがどういう経営状況か、未収金がたまって初めて悪かったのかと分かる。順調に見える方でも意外とくるしかったりすることがある。
・今回の研修で、知識は無くても、農家の考えを引き出す人が必要であると感じた。
・農家の経営情報の継続的な入手。
・離島なので、輸送コストの問題。
・農家経営診断で、農家を診断するが、内容が理解出来ず経営に対する指導が怠ける。指導員の人員不足により農家全員の経営診断が出来ていない(個人の経営状況が把握できない)。
・人手不足で農家経営の支援が出来ていない。経営支援に対する意識が薄い。(私自身も今まで深く考えていませんでした)
・JA職員の人員不足。そのため、自分の仕事以外の作業が多いので経営支援をする事が出来ない。また、営農、畜産、信用事業等の協力が必要。
・人員不足の為に仕事量が多く、組合員さん農家さんの細かい所に気づいてあげられない。
・同じ組合員といえど、多種多様な考えや経営規模がある中で、同じ一つの部会に所属していることで温度差がある。トップの交代で組織としての意向が180度変わることがある。
・人不足。
・株式会社のため、農家のためと思っても、出せる金額に限界がある。(肉の購入価格等)
・当事者意識を持つこと。
・各部署の連携、情報共有
・人事異動
・事業として立ち上げるうえで営農・経済だけでなく金融、共済を含めた連携が必要である。
・担い手事業の名前を知っているが実際何してるのか知らない業務が多い。(部門外・専門外は特に分からない)
・生産者が多い事で一人一人にかけられる時間が少ない事。

今回のアンケートを見ると非常に鋭い意見が多く、共感するものが多いです。演習もよくまとまっている班が多く、皆さんの集中度も高かったのではないかと思います。受講者の”学んだ”というより”楽しんだ”という反応の方がうれしいものです。
経営支援は難解であるというイメージが受講者の中から少しでもなくなってくれたら幸いです。

前期の研修会も無事終わらせることができました。事務局を務めてくれた相川様、伏下様大変お疲れまでした。後期もどうぞよろしくお願いします